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その時あなたは来てくれなかった この詩を書いた時詩人長瀬清子さんは 八十一歳でした 詩人っていつまでも心に 潤いをもっているのには驚きます 詩を 読むと若い時家出したとき 一緒に来てくれる筈の恋人の だれかさんが 心変わりしてこなかった事を八十一歳で 思い出し涙を流して詩にかいたようです あけがたに来る人よ あけがたに来る人よ ててっぽうの声のする方から 私の所へしずかにしずかにこる人よ 一生の山坂は蒼くたとえようもなくきびしく 私はいま老いてしまって ほかの年よりと同じに 若かった日のことを千万遍恋ういる その時私は家出しょうとして 小さなバスケっと一つをさげて 足は宙にふるえていた どこへいくとも自分でわからず 恋している自分の心だけがたよりで 若さ、それは苦しさだった その時あなたが来てくれればよかったのに その時あなたは来てくれなかった どんなに待っているか 道べりの柳の木に云えば良かったのか 吹く風の小さな渦に頼めばよかったのか あなたの耳はあまりにも遠く 茜色の向こうで汽車が汽笛をあげるように 通り過ぎてしまった もう過
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